平成30年2月小山市議会定例会、一般質問を公開しました。
平成30年2月小山市議会定例会
平成30年2月小山市議会定例会 一般質問内容
●議席番号3番、おやま創生会の土方美代でございます。ただいま議長の許可をいただきましたので、通告に基づき市政一般個人質問いたします。
まず初めに、今年度末をもって退職される職員の皆さん、長年にわたり小山市発展のためにご尽力を頂きましたこと、心より感謝と御礼申し上げます。退職後も健康にはご留意され、更なるご活躍を祈念しております。
それでは質問に移ります。
1、農地の相続について
(1)、非農業者が農地を相続した時の対応について
世の中には様々な職業があります。農業・商業・工業・医療から公務員に至るまで、約28,000種類とも言われています。そのような方々が、全国各地で各々活躍されていることは、大変喜ばしいことです。ですが、人間産まれてきた以上は、どこにいても、何をしていても、必ず終焉が迎えにきます。ある日突然、身内に不幸が訪れ、相続の手続きを行うにあたり、その相続財産の中に農地が含まれていることもあります。この農地の相続に関し、後日意外なトラブルが発生することが。
その原因の多くは、農地に関して知識がないことが挙げられます。そもそも農業をやったことのない子、相続人が農地法など知る由もありません。その他の資産同様、不動産の一種としか思っていません。また、地方に移住されている方、全く異なる業種に就かれた方々にとっては、相続によって得た田んぼや畑を管理することは大変困難で、というか、管理できないのが実情で、売却するか、誰かに貸すかしか方法が思いつきません。しかし農地法は、相続は適用除外ですが、相続人が第3者に売ったり、貸したり、または宅地にしてアパートや駐車場、太陽光の経営をはじめたりするには、農地転用の許可が必要となります。これも農業をやったことのない人にとっては、分からないことだらけです。
よく聞く話が、相続人が遠方にお住まいで、雑草の除去など、管理しきれないので畑をつぶして砂利を撒いてしまったとか、近くの会社の資材置き場として貸してしまったとか、プレハブを建ててしまったとか、これらは悪意なく、知識がないために行ってしまったこと。後になって、地目どおり現況回復するようにと指導されて、はじめていけないことだと気づきます。
次に多い問題が、農業用水の水利費、通称水代とよばれるものの請求ですが、相続人が抱く素朴な疑問は、「農業をやっていなくても、農地を相続しただけで、農家とみなされるのですか?」「農業所得もないのに、毎年毎年に水代を払わないといけないのですか?」という素朴な疑問です。もちろん、農業用水が土地改良区の管理ということも知らない方もいらっしゃいます。
とりあえず、農地を相続して困っているなら、「地域ごとに農業委員さんがいるから相談してみては?」「土地改良区に相談してみては?」と言ってみても、地元を離れて30年も40年も経っている者にとっては、なかなか相談に行けません。また、農地中間管理機構、農地バンクに賃貸の仲介を申し出ていても、なかなかこれも借り手が見つかりません。農振地の広大な優良農地なら借りても見つかりますが、小規模農地は自力で耕作者を探さないと見つからないのが実情です。地元にいれば、親戚縁者を辿って、誰かしら紹介してもらうことも可能かもしれませんが、地元から数十年も離れて生活されてきた方にとっては、借り手を見つけることは非常に困難な状態です。相続放棄も、煩雑な手続きを考えたら、なかなか現実的に手続きをするのは躊躇するでしょう。
今申し上げたことは、今後益々増えていく相談事案だと思っています。1件、2件の案件なら、個別相談でも対応できるのでしょうが、何十件、何十人と相談があることを踏まえれば、これは市全体の問題と捉え、今後の市政に反映していくべきではないかと考えます。行政も十分認識されていることと思いますが、
あらためて、質問です。
非農業者が農地を相続したときにおこりえる問題に関し、どのように認識しているのか?併せて、どのような支援を行っているのか、をお尋ねします。
◎福田幸子農業委員会事務局長 ただいまのご質問にお答え申し上げます。
農地の権利移動に関しましては、農地法の規定により、原則として農業委員会の許可が必要となっておりますが、相続による権利移動に関しては許可が不要なことから、非農家が農地を相続するケースが発生し、いわゆる不在地主等の発生の原因となっておりました。そのため、平成21年の農地法改正により、相続による農地の権利取得について、農業委員会への届け出が義務づけられました。それにより、相続した農地を耕作者にあっせんを希望する等、所有者の意思確認が可能となりました。
今後の対応といたしましては、相続人から相続した農地の耕作や維持管理が難しい旨の申し出があった場合は、地域の担い手が利用権を設定し、耕作が行えるよう、農業委員及び農地利用最適化推進員が連携し、あっせん活動を推進してまいります。また、農地の相続についてのパンフレットをホームページ上に掲載するとともに、窓口に配置するほか、関係機関と連携を図り、制度の周知を図ってまいります。
以上、よろしくお願いいたします。
●3番(土方美代議員) ありがとうございます。今まで相続による農地の権利移動は、農地法適用除外のため、農業委員会が掌握していなかったが、平成21年の改正で届出制になったため、権利移動を把握できるようになり、不在住地主の意思確認が取れるようになったとのこと。また、窓口に、農地の相続についてのパンフレットの配置、ホームページへの掲載をもって、あたってくださるとのご答弁でした。この届出制を知らない方もまだまだいらっしゃいます。今後、更なる周知活動を期待しております。
あわせて、農地に関して家族間での話し合いの促進にも、積極的に取り組んでいただきたいと思います。本当に大切なのは、相続が発生してから、問題が起きてから取り締まる罰則強化や、農地を持つ者の責務既定の新設よりも、問題が起きないように、予防するための政策が重要だと思います。日ごろから、親から子へ、さらには孫へ、日常生活の中で家族間の話し合いを持たれることが大切です。そのような農地所有者に対する助言指導をよろしくお願いいたします。
それでは次の質問に移ります。
2、「市街化区域内に点在する小規模農地について」
先の質問の中にもありましたが、点在する小規模農地に関してです。
街中の人たちの中には、老後は家庭菜園でもやりながら、ゆっくり生活したいと思い、移住してくる方もいらっしゃいます。やはり街中ではまだまだ土地も高いので、なかなか自分の家の敷地で作物をつくることが困難なため、道の駅思川裏の市民農園を借りている人もいます。ところが、2~3年で「やっぱり畑返したのよ。毎日道の駅まで畑を見に行くのがしんどくってね。家の敷地内なら毎日見ても苦にならないけど、わざわざ行くとなると、結構大変なのよ」と、こんな話をよく聞きます。イメージしていたのと、実際につくってみたのとでは、全然違うこと。私も40歳過ぎて初めて土いじりをしましたが、キュウリがたった1日、2日で、お化けみたいに大きく、ウリのようになってしまうことを初めて知りました。
市民農園を返した人達にお話を聞いて回ると、「初めての菜園。どの野菜がどれだけ大きくなるのか分からない、となりの敷地に出ないように気を遣う、ミニトマトですら木の様に覆い茂ってしまうし、セロリなどの作物は広がってしまうため、隣に迷惑がかかる。だから、何を植えるのか悩むし、人様に迷惑かけないようにと思うとやっぱり毎日見に行かなくてはいけない。でも、それには遠すぎる。」このような意見が多く見受けられました。続けたいけども、近場に市民農園がないという市民。反対に、貸したいけど耕作者が見つからない街中の点在する小規模農地所有者。
そこで質問です。
これらをマッチングさせて、行政が所有者の委託を受けて、10坪くらいの市民農園として、一般市民に貸し出すことは不可能でしょうか?お尋ねいたします。
◎秋永邦治産業観光部長 ただいまのご質問にお答え申し上げます。
市街化区域につきましては、宅地化を推進していく区域であり、道路や下水道などの生活基盤の整備に投資をしており、または今後投資をしていく区域であり、市といたしましては、市街化区域内の農地については、宅地への転換をお願いしたいところです。また、市街化区域内に点在する農地を何カ所も市民農園として整備し、管理運営することは、費用面や効率性を考えると難しいことから、道の駅思川の南側に整備しました市民農園をご利用いただければと存じます。一方、身近なところであれば、高齢者の方々も気軽に野菜づくりができ、農を通して話題が広がり、生きがいや健康の維持にもつながるものと思われます。
このようなことから、市では、市街化区域内で農地活用に困っている農地所有者に対し、貸し農園の開設に向け、市民農園整備促進法や特定農地貸付法による手続、管理運営の指導助言を行い、所有者みずからが貸し農園を開設できるよう支援してまいります。
以上、よろしくお願いいたします。
●3番(土方美代議員) ありがとうございます。費用面と効率性を考えると、市が借り上げる市民農園は難しいが、所有者自らが開設できる貸し農園として農地所有者を支援していただけるとのこと。借り手からすると市民農園でも貸し農園でも、畑が借りられれば目的は達成できますので、今後の細やかな支援を期待しております。
次の質問に移ります。
3、「用水路の清掃活動について」
中には、相続を機に、実家や地元に戻ってこられる方もいらっしゃいます。はじめての自治会活動、はじめてのご近所づきあい。今まで親が生きているときは、親がやっていたので、親なき今、はじめてのことづくしです。地域活動を始めてみると、いろいろな清掃活動があります。その中の一つに、用水路の清掃活動があります。用水路は深いのです。放っておくと、すぐに土や草、ゴミなどがたまってしまう。子供でも落ちたら危ないです。そこで地元住人で、なんとか清掃活動しようとするのですが、なかなか難しい。深いし、怖いし、場所によっては、プロの業者を頼まないと無理かな・・・というレベルもあります。これは、どこに相談に行ったらいいのでしょうか。農政課でしょうか?土地改良区でしょうか?
原則、自分たちの街は自分たちで管理しなくてはならない。農家でなくても、用水路には、雨水の受け皿になってもらっていたり、その地域に住む住人みんなが間接的に恩恵を受けている、だから管理維持にも努めなければならない。それでも、高齢化や様々な事情でできなくて困っている地域もあちらこちらにあるのも事実です。
そこで質問します。
農業用水路の管理維持に関する清掃活動など、小山市の考えと、今後の対応についてお伺いします。
◎大久保寿夫市長 ただいまのご質問にお答え申し上げます。
用水路は、都市化が進む以前の農村地域においては、稲作に不可欠な農業用水を供給する用水路として、土地改良区、農業者、集落等による除草や堀ざらい等の共同活動により維持されてまいりました。一方、住宅開発等により都市化した地域においては、本来の農業の目的以外に、雨水や非農業者の家庭排水を引き受ける必要が生じてまいりました。このため用水路を管理する土地改良区におきましては、住宅建設地の家庭排水のための農業用水への放流管の接続について、個々の住民と協定を締結し、防草シートの施工、除草作業等を条件として水利使用を承諾し、地域にお住まいの方々に維持管理をお願いしております。
住民の高齢化などにより、維持管理が滞る地域もある中で、最近横倉新田自治会では、自治会が呼びかけして、地域住民、土地改良区、市による新たな共同活動の体制が構築され、除草作業等が始められたところであります。地域の方々から大変喜ばれております。小山市としましては、自治会、土地改良区との調整を進め、このような新たな共同体制による取り組みの拡大を図ってまいります。
以上、よろしくお願いします。
●3番(土方美代議員) 市長、答弁ありがとうございました。自治会や有志が集まって管理維持に取り組んでいられる地域もあるというご紹介でした。今後もそのような地域が増えてくるのが理想的です。それでも、頑張ってもできない地域も出てくることも想定しなくてはなりません。自分の町は、自分で守る。自助、共助が原則であることも理解しております。公助は最後の手段かもしれませんが、原則どおり、かなわなかったときの政策を用意する、セイフティーネットとなることも行政の使命ではないのでしょうか。民間では、サービスは原則有料です。では、行政の立場からは、どんな支援ができるのでしょうか。補助金で支援する。労務を提供する。あるいは、地域住民から徴収する新たな制度を創る。様々な角度から検討を重ね、セイフティーネット政策に取り組んでいただけるよう要望とし、次の質問に移ります。
4、「新規就農と農地所有適格法人について」
今回、農地の相続に関連する質問をしておりますが、売りたい・貸したい人は多いのに、買いたい・借りたい人がいない。需要と供給のバランスがとれていない。いないなら育てるしかない。そこで新規就農と農地所有適格法人について質問します。
農地の転売に関し、農地は農家しか取得できないと誤解されている方も多くいますが、農地法の改正により、農地を効率的かつ適切に利用すれば、個人は原則自由に農地を取得することができます。賃貸であれば、法人は全国どこでも参入できます。とはいえ、一定の要件を満たさなければなりません。また、現実的な問題として、サラリーマンが農業を始めようとする場合、取得できる農地がどこにあるのか、農業技術はどこで習得すればよいのかなどの問題に直面します。小山市でも新規就農インターンシップ委託業務や新規就農者支援事業など、さまざまな支援をしているようですが、何せ未知の世界、なかなか始めることができません。
ここで、新規就農を考えている方が一番ネックになっている要件は、下限面積です。言いかえると、農地を取得するための面積が最低限50アール、10アールがちょうど田んぼ1枚分の面積ですから、田んぼ5枚分、なかなか新規参入者にとっては勇気が要ります。そこで、個人で購入するのではなく、法人として取得しようと考えると、代表例に農地所有適格法人が上げられますが、この法人設立もなかなかハードルが高い。その理由は、物理的なハード面だけではなく、異業種の人たちで構成する構成員の要件など、ソフト面も一つの要因です。今まで農業一本で生きてきた方と、電卓をたたいてきた商人とでは、価値観もタイプも異なります。
どの業種でも同じですが、例えば大工の棟梁とデザイナーの設計士がよくけんかをしてしまうのと似ていて、デザインや効率性、利便性などを考えてつくった設計士、現場に行って、イメージと異なる曲線を見て大工に注文をつければ、大工は大工できっと、こっちは地上数メートルの高さで手作業でやっているのだ、机の上で書いたようにはならないよと思うかもしれません。どちらもプライドを持って仕事をしているがための衝突です。
同じように、農家の方々は自分の作物を自信を持って育てています。毎年毎年一日として同じ天候もなければ、害虫や病気もその年によって異なります。それでも消費者に喜ばれる作物をつくろうと努力なさっています。片や商人も、そのときそのときの情勢を読み、消費者の需要と供給を考え、いかにオリジナルブランドとして付加価値をつけられるか、またコストを削減し、いかに粗利、収益を生み出すか、真剣に考えています。お互いに現場も知らないくせにとか、無理なことをやってこそ付加価値が上がるのだなど、それぞれの立場で衝突すれば、結果、空中分裂し、一つのものをつくり上げることはできません。営利の法人ならばなおさらです。
ですが、このような異なるタイプの業種や人をつなぐ橋渡し役として調整できるのは、利害関係を持たない公正中立な第三者、それこそ行政ではないのでしょうか。補助金だけ出しても、人と人はつなぎとめられません。物理的な許可要件の緩和や補助金を出すだけではなく、この調整役をなくして、今後6次産業の活性化は難しいのではないかと考えます。
そこで質問します。
小山市内の農地所有適格法人が増えない理由をどのように受け止められているのか?その原因を、どのように分析されているのか?また、人と人を繋ぐソフト面に関し、どのように考えられているのかをお尋ねします。
◎福田幸子農業委員会事務局長 ただいまのご質問にお答え申し上げます。
農地所有適格法人につきましては、経営管理能力の向上や経営継承の円滑化等のメリットがあることから、大規模農家を中心にその数をふやしており、小山市に本店を置く農地所有適格法人の数は、平成29年12月末現在で15法人であり、平成29年度には新たに1法人が農地所有適格法人となったところであります。
法人の数がふえない原因につきましては、国が農地法で定める農地所有適格法人の要件を満たすことが難しいことと、農産物価格の低迷及び販売価格の伸び悩みにより、法人の経営そのものの見通しがつかないことが大きな要因と考えております。また、法人に対する農業委員会の対応といたしましては、法人が農地法に基づく要件を満たさなくなった場合には、是正を勧告することとなっていることから、議員のご質問にあるような調整役としての活動は難しいものと考えております。しかし、農業委員会法の改正により、現在の農業委員のほとんどが認定農業者であり、中には法人経営に参画する農業委員もいることから、法人経営に関する情報の発信やアドバイス等も可能と考えております。
以上、よろしくお願いいたします。
●3番(土方美代議員) ありがとうございます。農地所有適格法人が増えない理由は、国の要件を満たすことが難しいことと、設立しても採算が取れないこと、この2つが大きな要因とお考えで、また行政が調整役になることは難しいが、農業委員さんの方でアドバイスをしていくとのこと。
先ほど設計士と棟梁の話をしましたが、私は思うのです。設計士だけ何十人集まっても、大工がいなくては家は建ちません。反対に棟梁ばかり集まっても、やはり設計士がいないと、新しい斬新的な家は建ちません。国も地方自治体も自給率の低下の防止、担い手不足の解消、耕作放棄地の有効活用など、さまざまな観点から農福連携や農泊、民泊事業、1次、2次、3次の連携による6次産業の発展などに取り組んでいらっしゃいますが、垣根を跳び越えて新しいものをつくるためには、異業種との連携が欠かせません。互いに尊重し合える関係づくりにご尽力いただければと要望いたします。
それでは、まとめに入らさせていただきます。
このたび一般質問でこの問題を取り上げた背景には、農地法も何も知らない相続人が農地を取得し、その後、意識の違いや国や、行政が考える農地に対する考えとの温度差に悩まれている方が多いことにあります。議員の中にも農業に明るい方々も多くいらっしゃいます。職員の中にも農業に精通された方々がたくさんいらっしゃいます。そのおかげで農家のための農業政策は熱く議論され、さまざまな施策として着手されていますが、農家ではない、いきなり相続で農地を取得してしまった非農業者に対する支援が薄く感じられます。
皆さんが説明される言葉や紹介する機関、制度、体制、それらの全て知らない者にとってはとてもわかりづらいのです。2月議会は予算が示されます。予算というのは、単にお金の話だけではなく、次年度の行政としての方向性を示す事業計画のようなものだと認識しております。人にやさしい政策をというと、どうしても市民を甘やかす、わがままを聞く政策というふうに誤解されがちですが、そうではなく、この行政と市民の問題認識の温度差を埋めること、縮めることが市民にやさしい政策だと私は思っております。
農地は地域における貴重な資源です。どうか農家のための農業政策にとどまらず、農地を相続してしまった非農業者に対する支援を一層充実していただき、次年度も厳しくも思いやりのある政策運営をお願い申し上げ、私の質問を終わりといたします。
ありがとうございました。