平成27年6月小山市議会定例会、一般質問を公開しました。
平成27年6月小山市議会定例会
平成27年6月小山市議会定例会 一般質問内容
●議席番号3番、土方美代でございます。ただいま議長の許可を得ましたので、通告通り市政一般に対し、個人質問させていただきます。
その前に一言。このたびの市議会議員選挙におきましては、市民の皆様方の温かいご支援のおかげで、こうして壇上に上げていただきましたこと、この場をお借りしまして心から御礼申し上げます。
それでは質問に移ります。
1、小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱について
成年後見制度がスタートして15年。議会の中でも活発に議論されてきました。
この成年後見制度の話題になりますと、どうしても認知症高齢者の話が中心となってしまいます。確かに超高齢化社会に向かって需要も多く、高齢者が悪い人に騙されないか、病院や施設との契約に困っていないか、財産をどうやって守っていくのかと、さまざまな問題と向き合う重要な議論です。ですが、それだけにとどまらず、成年後見制度の趣旨・目的に沿って、同じだけ知的障がいや精神障がいの方々にも目を向けていただきたいと思います。
我が小山市においても、平成16年3月には『小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱』が策定され、さまざまな理由で制度を活用できない方を救済するための措置が講じられています。
ここで、素朴な疑問が1つ。この実施要綱では第1条の目的に、
「この要綱は、認知症高齢者の成年後見制度の利用を支援することにより云々」
と規定されていますが、成年後見制度の対象者は、認知症や知的障がい、精神障がいの方々です。表題である冠は、『小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱』なのに、この目的を読むにあたって、対象者が(この制度を誰が使えるのか。)ということですが、認知症高齢者と限定しているのはなぜでしょうか?そして、目的の対象から外れてしまった知的障がいや精神障がいの方々に、この実施要綱を適用することは難しいのでしょうか、お答えください。
◎栗原千早保健福祉部長 ただいまのご質問にお答え申し上げます。
小山市の成年後見制度利用支援事業は、現在認知症高齢者を対象とした小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱と知的障がい者及び精神障がい者を対象とした小山市地域生活支援事業実施要綱の2つの実施要綱に基づき、それぞれ同様の事業内容で実施しております。小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱を制定した平成16年3月時点では、同要綱の対象者は認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者でございました。しかし、平成24年4月の障害者自立支援法の改正により、障がい者及び障がい児の福祉の増進を図ることを目的として実施する地域生活支援事業において、成年後見制度利用支援事業が必須事業となったことから、知的障がい者と精神障がい者に係る成年後見制度利用支援事業については、小山市地域生活支援事業実施要綱の中に定めることといたしました。それに伴い、小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱においては、知的障がい者と精神障がい者を対象から除く改正を行った次第でございます。
その結果、一般市民の方で小山市の成年後見制度利用支援事業を利用しようとする方にとりましては、小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱と小山市地域生活支援事業実施要綱の2つがあり、対象者について誤解を招きやすくなっていると思われます。今後市民の方にもわかりやすい実施要綱となるよう検討してまいりますとともに、福祉ガイド、ホームページ、パンフレット等でわかりやすく周知してまいりますので、以上、よろしくお願いいたします。
●3番(土方美代議員) ありがとうございます。
ただいまの回答によりますと、成年後見制度の目的の主語が認知症高齢者と限定されていることに対して、別の要綱である「地域生活支援事業実施要綱」には規定があるので、「成年後見制度利用支援事業実施要綱」には知的障がい者及び精神障がい者が除外していても問題がない、ということですが、表題が成年後見の実施要綱となっている以上、目的の主語が認知症高齢者と限定していては、冠と中身との整合性がとれないのではないのでしょうか。それに2つの違う実施要綱において、片方には読みかえ規定があり、片方にはないということに、いささか疑問を感じます。もし2つでワンセットだというのならば、その旨記載するべきですし、または、目的の主語を「認知症高齢者等」と「等」を入れるべきなのではないのでしょうか、お答えください。
◎栗原千早保健福祉部長 ただいまの再質問にお答え申し上げます。
先ほど申しましたように、2つの要綱等でできているということで、非常にわかりにくい状況でございます。ご質問の「認知症高齢者等」という文字につきまして、そのことにつきましては、法規上の問題をクリアして後、先ほど申し上げましたように、わかりやすい要綱にしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
●3番(土方美代議員) ありがとうございます。
市民にとって規定が重要なのではなく、実際に活用できるかが、これが重要な問題だと思っております。できれば成年後見実施要綱においても、「認知症高齢者等」と「等」を追記し、今後の運用が一人でも多くの市民を救えるよう、お願いいたします。
それでは次の質問に移ります。
2、成年後見制度の市長申し立てについて
さきの質問で取り上げた成年後見の実施要綱に基づき、認知症高齢者はもちろんのこと、知的障がいや精神障害がいの方々を支援する制度(知的障害者福祉法第28条や精神保健及び精神障がい福祉に関する法律51条の11の2)に市長申し立てというものがあります。この市長申し立てとは、成年後見手続きが必要な方がいらっしゃるにもかかわらず、その方に身寄りがなかったり、経済的な理由から手続きがとれない方に代わって市長が申立人になって、本人を守る制度です。成年後見の申し立ては原則親族が行いますが、身寄りがない等の理由から、『特に必要があるとき』と認められた場合において、市長が申し立てをすることができるとなっています。
この親族の有無が分岐点なのですが、親族がいる場合であっても、実際問題、協力してくれる方々ばかりではありません。要支援者のまわりのヘルパーさんやケアマネさんが、親族の方にいくら成年後見の必要性を訴えても、「うちには関係ありません」とか、または別居の場合などは「もう何年も付き合っていないのでわかりません」とか、「面倒くさいことには関わりたくありません」とか、取り合ってもらえないことが多々あります。また、この成年後見制度を利用されると都合の悪い方々もいらっしゃいます。例えば、親や障がい者の財布と自分の財布が一緒になっているような方です。今までは自由に親の財産や障がい者の年金を自分の生活費として使い込んでこられたのに、この制度を使うと、後見監督人や裁判所の許可がないと財産を処分できなくなってしまうからです。ひと言で言えば、年金の搾取ができなくなってしまうからです。
このように、親族の都合で本人の権利が守られていないのも実情です。判例では、同居の親族がいても協力が得られず、本人の権利を守ることが困難な場合には市長の申し立てを認めるとなっています。この条文に規定されている「特に必要があるとき」とは、小山市ではどのような場合を指し、何処までの範囲をフォローするつもりなのか、お聞かせください。
◎栗原千早保健福祉部長 ただいまのご質問にお答え申し上げます。
小山市では、老人福祉法第32条等に規定される市町村長の申し立て要件である、その福祉を図るために特に必要があると認めるときにつきましては、本人に4親等以内の親族がいなかったり、これらの家族がいても音信不通の状態にあるなど、親族等による申し立てができない場合であり、本人の保護を図るために必要な場合には、積極的に市長申し立てを行うべきであると考えております。
以上、よろしくお願いいたします。
●3番(土方美代議員) ありがとうございます。
そうですね。法律上は4親等内の親族がいない場合は市長申し立てを認める。小山市では負担軽減の観点から、2等身でもいいというような規定になっております。ですが、そもそも1親等だろうが2親等だろうが、協力を得られないから困っているのです。単に小山市の場合、4親等を2親等にハードルを下げたから十分に対処をしているともしお考えだったらば、若干短絡すぎませんか。規定はつくることに意味があるのではなく、活用されて始めて意味があるのです。実情に照らし合わせるならば、親族がいるかいないか、または4親等を2親等にしたから大丈夫と2親等と記載されるのではなく、先ほど申し上げたように、最高裁の判例に基づき、原則2親等、ただし、同居の親族がいても協力が得られない等、特別な事情があるときにはその旨でない等を加味し、柔軟な対応がとられるようにするべきなのではないのでしょうか。
さきの質問でも申し上げましたが、活用されづらい制度では、意味が無いのです。現に、これまでの市長申し立て件数を見ても殆どがゼロ件、平成23年1件。24年1件。25年2件。それ以外はゼロ件です。この数字が、制度の見直しを示しているように思われますが、どのようにお考えでしょうか。
◎栗原千早保健福祉部長 ただいまの再質問にお答え申し上げます。
小山市成年後見制度利用支援事業実施要綱第3条第2項で、対象者について民法が定める4親等ではなく、2親等内の親族がないと定めておりますのは、4親等以内の親族の有無の確認作業が極めて煩雑であることも要因となっておりまして、市長申し立てが十分活用されてこなかったことがあります。平成17年の厚労省通達によりまして、2親等内の親族の有無を確認すればよいということにされたことによりまして、極力時間をかけずに迅速に市長申し立ての適否等を判断するために、2親等内のということで定めておりますので、よろしくお願いたします。
●3番(土方美代議員) ありがとうございます。
福祉の現場はしゃくし定規で図ることはできません。柔軟な対応をとれるよう、ただし書きな等をつけて、利用者目線の制度にしていただけたら幸いです。
それでは次の質問に移ります。
3、親亡き後問題について
「知的障がい者の親亡き後問題」が深刻です。親亡き後問題とは、親である自分の死後、障がいをもった子どもをどうしたらいいのかという問題です。年々子どもが歳を重ねれば、親も同じだけ歳を重ねます。障がいの子を抱え、若いときはがむしゃらに働き、介護も仕事も両立してこられましたが、子どもが50代になれば、親もいい年齢です。自分の体も持て余すようになると、急に不安が襲いかかります。私たちがいなくなった後、この子はどうすればいいのだろう・・・親の責任として、この子を残しては死ねない。このような将来に対する不安から無理心中を図る残念な、とても悲しい事件が全国で後を絶ちません。
この様な悲惨な事件が繰り返されないように、救済法として成年後見制度や障がい者自立支援法をはじめ、さまざまな法律や制度が確立されましたが、日々の介護におわれている人たちは、その日その日を生きるのに精いっぱいで、なかなか知識を得る機会がありません。制度はあるのに、制度があることすら知らない。知らないことによって、知らないが為に不幸になってしまう方がいる。こんな方々を一人でも減らす、これこそ行政が向き合わなくてはならない課題なのではないのでしょうか。
そこで質問です。まず1つめに、この「親亡き後問題」について小山市はどのように取り組んでいるのかお聞かせください。
続けて2つ目に、先ほど申し上げた「制度があるのに、あることすら知らない。知らないがために不幸になってしまう方」こんな方々を一人でも減らすために、具体的に行政はどんな方法で取り組んでおられるのか、お聞かせください。
◎大久保寿夫市長 初めに、土方議員におかれましたは、初当選、まことにおめでとうございます。市民の負託に応え、市民目線で小山市発展のためにご尽力を賜りますようお願いいたします。
ただいまのご質問にお答え申し上げます。親亡き後の問題は、障がい者を長年支えてきた親族が死亡、あるいは高齢等の理由から、支えられなくなった状態で発生する問題であります。この問題は親亡き後が到来する以前から、親亡き後を見越した長期的な計画を立てていくことが重要であります。したがいまして、小山市といたしましては、任意後見制度を含めた後見制度が、親亡き後問題を解決する重要な対策であることを、本人、家族及び相談支援員等の関係者にも十分周知し、適切な福祉サービスが提供できる体制を構築してまいります。
一方、障がい者の成年後見についても、非常に長期にわたる支援が必要になることから、法人後見制度についても、今後先進地の事例を参考に、調査検討してまいります。以上、よろしくお願いします。
●3番(土方美代議員) 市長答弁ありがとうございます。
この問題について体制の整備をしていただけるということで、是非とも実情に合った制度の運用を期待しております。
このように、障がい者自身を守る制度は数多くありますが、障がい者を支える家族に焦点をあてた制度は、まだまだ整備が整っておりません。《介護》ひと言で言うのは簡単ですが、《介護をする》ということは本当に大変です。要介護者も不自由が沢山あると思いますが、もっと大変なのは要介護者を支える家族なのです。どんなに頑張っても頑張っても、「家族なのだから当たり前」と誰からも評価されず、24時間・365日、休みもなければ終わりもない。はっきり申し上げて、「体力」の限界が先か、「精神力」の限界が先かと、毎日が「不安」との葛藤なんです。
このような介護疲れから不幸な事件が起きているのも事実です。親亡き後問題が『将来に対する悲観』なら、介護疲れは『現在に対する絶望』なのです。どちらの問題も障がい者を支える支援者側の問題です。ぜひとも、この支援者側の支援にも目を向け、本気で取り組んでいただきたく、私からの要望といたします。
最後にひと言、
今までの質問を通して、介護とは辛く苦しいイメージをもたれた方もいらっしゃるかとは思いますが、中には介護を楽しんで生活している方もいます。障がい者を抱え、きのうできなかったことがきょうはできた、ほんの一瞬笑ってくれた、あしたは一体何ができるのだろうと、そんなささいな、ささやかな幸せの中に希望があるはずです。ここにいる全ての人たちが、そんなささやかな幸せを守っていただけたらば幸いです。
以上、質問を終わります。ありがとうございました。